結婚式に神父さんが教えてくれたこと
あの瞬間は舞い上がっていたというか、別のことが気になってしょうがなかった。
だから今でも、「ちゃんと覚えておけば良かった」と後悔してる。
14年前の5月13日、僕たちは昔からの馴染みの場所、明石大橋が間近にそびえる、日本庭園が素敵なホテルで式を挙げた。
式を経験した人の多くの人がそう感じたかもしれないけど、朝から何か浮き足立った状態というか、その日の主役を務めるということに違和感が拭えないままだった。
当日はそれぞれ実家から会場へ。
確か新婦一家はいろいろ準備があるので、先にホテルに到着していたと思う。
親戚たちに一通り挨拶はしたものの、新郎の支度はあっさり終わって意外とすることがない。
その後、準備が整った妻の花嫁姿を見る。
みんなきまって「わあ~、きれい」とか言うあの瞬間だ。
でも自分はどこか他人事というか、どういう感情で眺めてたのかよく覚えてない。
式は庭のチャペルで挙げることになっていて、まず二人でリハーサルでいろいろ指導を受ける。
神父さんはけっこうちゃきちゃきした関西人のおじさんで、和ませてくれる。
「誓います。。」
「あかーん、そんなんやったら皆さんに聞こえませんよ。」
と言われては何度もダメだしをくらい、言い直しをさせられた。
「まあ、本番はもう少し頑張りましょう。」
とぎりぎりOKを出され、本番に臨むことになった。
そして本番、バージンロードをお義父さんと一緒に妻が歩いてくる。
ちゃきちゃき神父さんは、すっかり神父然としていた。
僕はといえば、まずこうして次にこれして、と段取りで頭が一杯だった。
後になって妻から言われたけど、誓います発言の前は、僕は一生懸命咳払いをしたりして備えてたらしい。
そしてその瞬間、まるで選手宣誓かのような力強い「誓います!」は、あとで「やり過ぎや」と笑い話に。
まあそれ自体は上手く行ったからこその笑い話になったので、それはそれで良かった。
でもそうやって、つぎの動きやら発言やらに気を取られ過ぎて、肝心の神父さんのありがたい教えを半分しか覚えてない。
そのちゃきちゃき神父さん、本番ではとてもいい話をしてくれた、、ように思う。
それは確か結婚の極意というか、結婚することとは、という話だったと思う。
20代、30代と人生のステージに合わせた結婚観を披露してくれてた。
前半は、忘れた。。
50代頃からおぼろげに覚えてるけど、確か「あきらめ」だったように思う。20代のキーワードから見事な下り坂で、笑いも起きていた。
それはその瞬間幸せの絶頂にいる僕らが、これから夫婦として歩んでいくための道しるべとして言ってくれていたんだろう。
そして60代は「悟り」と続く。
最後、そろそろお互いの寿命が意識される70代、それは「感謝」だった。
その瞬間、とても心が温まったこと、そして長い道のりをこの妻と歩むんだな、と感じたことを覚えてる。
今となっては、本当に彼が言ったのか、その後いつの間にか自分が脚色してるのかわからない。
でも、日々いろんなことがあり、しんどかったり喧嘩したりするけど、長い道のりを妻とゆっくり歩いているという実感を持てているのは、その神父さんの言葉のおかげかもしれない。