夫婦円満の鍵は経済学にあり
「比較優位の原則」
経済学をかじった人であればきっとすぐ「あ~あれか」と思い出すであろう、デビッド・リカードが提唱したあまりに有名な理論。
この理論、ひょんなところで思いがけず思い出す出来事があった。
この連休、家族で久しぶりに郊外にキャンプに行った。
意気揚々と出発したはいいけど、妻の様子がどうもおかしい。
着いた頃にはすっかり元気をなくしていて、すでに38度の熱があった。
子供たち三人、いろいろ手伝ってくれるとはいえ、まだ小学生、しかも一番下はやっかい盛りの3歳で手伝ってくれるどころかいるだけで手がかかる状態で、手数としてはむしろマイナス。
そんな中での妻ダウンは戦力的に相当痛い。
火おこしはもとより、普段妻まかせの料理まで。
特に料理なんて、学生時代のバイト以来、ほとんどやってない。
普段は料理好きの妻のおかげで、完全に任せておけばOKだった。でも今この状態だと背に腹は変えられない。
ただ肉や野菜を焼いて少し味付けするぐらいだったけど、まあおぼつかないこと。
とてもじゃないけど、たまに料理を振る舞う格好いい父ちゃんとは程遠い状態だった。
なので一食こなすだけで心が疲れはててしまうくらいで、翌朝の朝食前には、また自分が料理をしないといけないことを想像するだけでストレスを感じるほどだった。
改めて妻の料理好きにどれだけ助けられているか痛感させられるイベントになった。
そんな時ふと思い出したのがこの比較優位の原則だ。
夫婦間で衝突の種によくなるのが家事の分担。
自分はこれだけやってるのに、とか、代わりにこれやれ、とか、つい夫婦間で家事の量をめぐって妙なテンションのせめぎ合いがある。
そもそも料理や掃除、洗濯などいろんな家事があって、どれがどっちより大変とか量的な負担が大きいとかはっきりと比較できないのに、それを双方の取引で痛み分けしようと思うだけに、いつまでたっても自分の方がしんどい、とかの不安感は拭えない。
もっといえば育児だって教育だって、親の相手や役所の手続き、町内の付き合い、所得をどっちがとってくるかも含めると、夫婦間での分担のあり方は複雑極まりなくなる。
これを負担量でわけようという意識がどこかにあるから、夫婦間の相互不満やあつれきが減らないんじゃないだろうか。
そこでこの「比較優位の原則」。
以前竹中平蔵さんが、比較優位を論文を執筆する際の教授と助手役の学生との間の分担のあり方でわかりやすく教えてくれていた。
教授は論文の執筆を学生の10倍の生産性で行うことができる。
他方、論文の題材のための情報収集や分析には学生の2倍の生産性で行うことができる。
この場合、教授と学生はどのような分担とするのが最も効率的か。
答えは簡単、学生が情報集めに注力し、教授は論文執筆に集中する。
二人の間ではこれが最も効率的かつhappyな状態だ。
ここのミソは絶対優位でなく比較優位であること。
論文執筆も情報収集も個々で見れば教授の方が能力があって素早くできるだろう。絶対優位はどちらも教授にある。
でもそれを教授が全部やればいいか?
となるとせっかくの労力である学生をみすみす無駄にするしすべて一人でやるにはかえって時間がかかるだろう。だから比較的により優位な方に特化することで、残りを別の人にまかせるということができるのだ。
これ、夫婦間でも使えるんじゃない?
もちろん、夫婦間ではいろんなタスクがあるので、どれがどのように比較優位があるのかを明らかにするには相当複雑な算式になるだろう。
でもいいたいのは、夫婦間で最も効率的な分担は何かを追求するのではなく、比較優位の原則の考え方をもとになんとなく分担していた方が、「俺の方が頑張ってる」とか量的に計算しようのない不毛な争いをしなくても済むのではないのかということ。
妻の方が料理が得意なのでまかせる。
その代わり、片付けは自分の方が得意なのでやる。
プロセスで分けても良い。
洗濯機に放り込んで干すまでは妻の方が気楽にできる。その後たたんでから箪笥に入れるまでは自分の方がどちらかというとストレスはない、とか、それぞれの向き不向きに合わせて考えればいい。
子供の勉強で丸つけや見直しをするのに向いていればそっちに集中して、家事は妻にやってもらってもいい。
量の問題じゃない。
お互いに得意な方で家事や育児を補い合うということだ。
何をするか?よりもどっちが得意、好きかの尺度で振り分ければ、互いの得意なことを認め合うことにもなるしいいことだらけを
もしかすると今よりもっと夫婦円満、さらにもしかすると互いに感謝したり惚れ直したりするかも?!
まあ最後のは妄想ですが。
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